1. PMO選定の失敗
多くの企業が「PMO(Project Management Office)」を設置する際に直面する課題の一つは、PMOの役割や位置付けを曖昧にしたまま導入してしまうことです。
たとえば「PMOを置けば進捗管理が強化されるだろう」といった期待だけで設置すると、現場は負担増と捉え、経営層は効果を実感できず、早期に形骸化してしまいます。
これは、PMOの種類と機能レベルを明確にせずに導入した典型的な失敗例です。
PMOは万能ではなく、組織の状況やプロジェクトの性質に応じて選定すべき形態が異なります。
その理解が不足していると、期待と現実のギャップが広がり、かえって組織の生産性を下げる結果につながります。
2. PMOの三類型
PMBOKなどで整理されている代表的な分類は以下の三つです。
- 支援型PMO(Supportive)
プロジェクト管理に関する情報提供・テンプレート・教育支援を中心とし、強制力は持たない。- 特徴: 知識共有、教育、テンプレート提供などの「支援」に徹する。強制力は持たない。
- 機能しやすい場面: 経験豊富なPMが揃っており、自律的に運営できる組織。創造性・柔軟性が重視される分野。
- 機能しにくい場面: PM経験が浅い組織、規制遵守や統一的なルール徹底が求められる環境。
- 管理型PMO(Controlling)
標準プロセスやルールを定め、各プロジェクトがそれに準拠するよう監督・統制する。- 特徴: 標準化・ガバナンスを重視し、監査やレビューを通じてルール順守を強制する。
- 機能しやすい場面: 複数部門にまたがる多数のプロジェクトを統一的に管理したい場合。
- 機能しにくい場面: 統制を嫌う文化を持つ組織。
- 指揮型型PMO(Directive)
プロジェクトを直接的に指揮・管理し、責任を負う。 強い権限を持ち、戦略的にプロジェクトを推進する。- 特徴: プロジェクトを直接管理・指揮し、責任を持つ。最も強力な統制権限を持つ。
- 機能しやすい場面: 全社戦略に直結する大型・高リスクプロジェクト。規制要件が厳しい産業。社内にPM人材が不足している場合。
- 機能しにくい場面: 小規模・低リスクのプロジェクトや、自律性の高いチームに対しては過剰統制になりやすい。
3. PMO選定時のポイント 何をPMOに依頼するのかを明確にする
PMOを選定する際の鍵は、「自社の現状」と「PMOに求める役割」を明確にすることです。
簡単に下記観点でチェックして、社内で上記分類を加味しながらどういうPMOを求めるか明確にするとよいでしょう。
- 組織の成熟度: PMスキルが十分にあるか、未熟か。
- プロジェクトの特性: 上流工程にいるのか、開発など実行に入っているのか。リスクや規制要件はどの程度か。ステークホルダーは多いのか。
- 期待する成果: 知識共有の基盤か、標準化とガバナンスか、あるいは直接的な推進力か。
たとえば、下記ような場合は支援型PMOではなくある程度方向性を導きだせるな指揮型PMOが必要となるはずです。
・これまで組織内ではプロジェクトマネジメントは「なんとなく」実行されている状態
・上流工程で、プロジェクト内でまだ何をするかも固まっていない
・PMOには定型的な進捗報告ではなく、プロジェクトを推進してほしい
まとめ
PMOという言葉でイメージされる役割は千差万別であり、期待値のずれが生じやすいです。
PMOでイメージされる役割を万能にこなせる人は市場に多くいるわけではないからこそ、
「今、どんな役割の人が求められているか?」を社内で検討した後にPMO導入を検討されることをおすすめします。
もし、PMO導入のご検討時にはどのようなPMOが必要かからヒアリングさせていただきます。